お寺という宗教団体が国の法律により法人格をもったものです。この法律が「宗教法人法」(昭和26年)です。この法律により、法人格をもつときは、人間と同じように、自分の意志で行動できるようになります。
@宗教法人である寺院が財産をもてる。宗教活動をすすめるうえにはどうしても財的な基盤が必要です。檀信徒が提供(寄付)した浄財等を物的基盤として、境内地や境内建物が宗教法人のものであり、これが基本財産となっています。これは、お寺の財産は住職のものでも、檀信徒(檀家)のものでもなく、法人の財産ということです。
A法人財産に対して税法上の優遇措置が講じられる。お寺の土地や建物などに課せられている固定資産税は、宗教法人が、宗教活動のために使用する境内建物および境内地については非課税です。たとえば、檀信徒用の参詣駐車場については非課税ですが、寺の土地で月極め駐車場をすれば、課税対象となります。
B宗教法人であると国により公認され、広く社会的に公認される。宗教団体が宗教法人であることを行政庁が認知したという行政行為は、法人法で定める正しい手続きで所轄庁が確認し証明することとなり、社会認知されることになる。
宗教法人法は、宗教上に関する事項を規定しておりません。それは、憲法第20条で、信教の自由と共に政教分離を規定してます。この大原則にもとづき宗教法人法は制定されており、国家は、宗教団体に対して、どのような形においても調停したり干渉したりすることができません(宗教法人法第85条)。これは国が宗教上の特性および慣習を尊重し、信教の自由を妨げることができないように留意する趣旨からくるものです(宗教法人法第84条)。憲法の趣旨からくる尊重・自由の聖域と、法人法の趣旨からくる団体規則の俗域との二面性をもってます。お寺は、この「宗教法人法」の規定に従い、その取り決めにより、各寺院が「寺院規則」を制定し、適正に行い、憲法に保障される聖域の部分は、曹洞宗の場合「宗制」という、規則を制定しその中で適正に活動しております。ちょっと難しかった?つまり、お寺は、「宗教法人法」「寺院規則」を守り、「宗教法人法」で触れられない、「憲法」で保障された部分は「宗制」を守って運営していくのです。
宗教法人法であるお寺の運営は、法人制度趣旨の公共性と政教分離にもとづいて責任役員制度をとっています。責任役員制度とは、責任役員が宗教法人の事務決定機関となり、宗教法人の管理運営の事務を行うというものです。宗教法人のお寺には、3人以上の責任役員が置かれ、そのうち1人を代表役員とするというのが、宗教法人法の規定です(宗教法人法第18条第1項)。曹洞宗の場合、代表役員の選定には、お寺の住職が就き、代表役員が責任役員の選定をすると「宗制」に制定されてます。
法人役員は、法人の意志を決定し、事務を処理する重要な役割をになってます。この役員は民法上の委任契約による受任者の地位を有します。法人と役員の関係は、法人との間で「就任してください」−「就任しましょう」という両者の意志合致があり、委任(正確には事務処理の委任ですから準委任)関係が確定します。 民法は、受任者の義務として、「受任者ハ委任ノ本旨ニ従イ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ委任事務ヲ処理スル義務ヲ負フ」(第644条)と定め、この規定は、「法律行為ニ非サル事務ノ依託ニ之ヲ準用ス」(第656条)とされており、役員事務が法律行為に関係するか否かにかかわらず、その事務処理にあたっては、その委任の本旨に従った善良なる管理者の注意を尽くして処理にあたるべき義務があるのです。うーん、とても難しいけど、とても重要なことです。このことを、寺院の役員さんが徹底することが、健全な運営だと思うのです。
責任役員より総代さんの方がなじみが深いでしょうが、、宗教法人法に総代は、規定されていません。総代は戦前の「宗教団体法」とそれより以前では、「社寺総代人選挙並にその権限等に関する件」(明治14年)「社寺総代人員並に権限に関する件」(明治24年)にありますが、これら過去の法律の中には現在の公共性に支障あるものがあり、現在各寺院は「総代」という呼称のみを用い責任役員を兼ねて就任していることがあります。しかし、従来の慣習からか、現在でも、住職の選んだ総代を寺総代とし、檀家が選んだ総代を檀家総代として協議するというのがありますが、寺院と檀信徒(檀家)は別々のものでなく、寺院(法人)の人的要素の組織を中心として信頼関係をもとに寺院運営していく考え方が基本であり、総代は、檀信徒の利益代表ではなく、寺院(法人)に対し、上記の善意管理義務を負える方であるべきです。住職対総代(檀家代表)の構図ができて、運営に支障が出ている法人の話を耳にします。総代とは、何ぞやと今一度確認すべきであり。責任役員と総代は兼任で善意管理義務を周知徹底し、総代という法的責任能力のない発言で運営に支障がでないよう留意すべきだと思うのです。